胆石症、胃がん、大腸がん
◆ 腹腔鏡手術
ここまで進んだ鏡視下外科
消化器外科領域では内視鏡(腹腔鏡)を使用する手術(以下;鏡視下手術)が普及しています。鏡視下手術は1989年に最初の腹腔鏡下胆嚢摘出術(胆石や胆嚢ポリープの手術)が報告され、以後世界的に普及した手術です。胆嚢摘出術以外にも積極的に鏡視下手術を導入しています。特に、胃がんに対する切除術、大腸がんに対する切除術などのがんに対する根治性を追求した手術を中心に行っています。良性疾患では、肝嚢胞(肝臓に巨大な水のたまりができてしまう)に対する手術、脾臓摘出術、逆流性食道炎に対する手術、癒着障害などによる腸閉塞解除術、脱腸(鼠径ヘルニアなど)に対する手術などを行っています。
鏡視下手術は患者さま全員に行えるものではありませんが、小さなキズですみ、かつ、体への負担も比較的軽くすみます。開腹手術(通常の手術)に比べると患者さまは術後より早期に良くなっていきます。しかし、すべて良いことづくし、ということではありません。鏡視下手術をするか否かの選択はこの手術法の利点・欠点を考えて行ない、その選択が患者さまにとって良い外科治療となるように私どもは日夜努力しています。
◆ 胆石・胆石症の原因
胆石は大部分がコレステロールでできています(コレステロール石)。
肝臓は胆汁酸とコレステロールを原料に胆汁を作ります。
胆汁には大量のコレステロールが含まれていますが、ほとんどは胆汁に溶けています。
しかし、胆汁内のコレステロールが増えすぎて、胆汁中の他の成分とのバランスが崩れコレステロールが飽和状態になると、溶けきれないコレステロールが結晶化して、それが次第に成長して胆石となります。
胆石にはコレステロール石以外に、胆汁の色素成分であるビリルビンが主成分であるビリルビンカルシウム石などがあります。
胆嚢結石はコレステロール石が多く、胆管結石はビリルビンカルシウム石が多いことがわかっています。
日本では近年胆石持ちや胆石症患者が増加しています。
特に高齢者の胆石持ちが多く、性別では女性の割合が多いですが、これは女性ホルモンが関係していると考えられています。
また、糖尿病患者や肥満体質の人にもできやすいと言われています。
日本では、以前は穀物や大豆、野菜などを主に食べており、そのころは胆石持ちや胆石症患者は少数でしたが、食生活の欧米化が進み、肉類や脂肪・コレステロールを多く含む食べ物をたくさん摂るようになってから増加したと考えられています。
また、アルコールの大量摂取や疲労、さらに朝食を抜いた生活を続けていると胆汁が胆嚢や胆管内に留まってしまい胆石になりやすいと言われています。
現在、国民の15~20%が胆石持ちで、そのうちコレステロール石が8割を超えるとみられています。
ちなみにアメリカでは65才以上の20%が胆石持ちであり、その内80%が無症状胆石で、年間に50万人以上が胆嚢を摘出する手術を受けています。
◆ 胆石・胆石症の予防
胆石の多くは無症状のため早期発見は難しいですが、超音波検査(エコー)などで見つけることがきるので、40才以上になったら1年に一度生活習慣病予防検診や人間ドックなどを受けることをおすすめします。
また、胆石は遺伝性もありますが、主にコレステロールの過剰摂取により起こるので、日常生活の中である程度予防することは可能です。
1. 肉類や脂肪分・コレステロールの多い食べ物を控える
2. 栄養(炭水化物・タンパク質、脂質)のバランスを良くをとる
3. ビタミン類(特にC)を多く摂る
4. 規則正しい食事を心がける(朝食をきちんと摂る)
5.食物繊維をたくさん摂るようにする
6. 十分に休養をとり、疲れを残さない
7. 定期的に運動をして肥満を防ぐ
8. 糖尿病を防ぐ