痔核、裂肛、痔ろう
◆ 痔核
痔核は解剖学的に内痔核と外痔核に分類され、内痔核の主な症状は、出血、腫脹、脱腸が多く、外痔核は腫れ、疼痛ですが、時には激しい痛みを伴うことがあります。実際の診察で内痔核、外痔核は混在することが多いようです。
内痔核の大きさの程度によりI度からIV度に分類されますが、手術の適応となるのはII~III度以上の腫れがある場合が一般的です。
手術は結紮切除術という方法が多く、もちろん麻酔下で施行するので、手術時の疼痛はありません。また、手術と同様の効果が得られる、術後の疼痛もほとんど伴わない治療法として、「ALTA」という薬剤を使用する硬化療法があります。数年前より使われており、治療成績も良好のようです。痛みをほとんど伴わないのは、患者さんへの一番の恩恵と思います。しかし、すべての痔核に適応があるわけではありません。
◆ 裂肛
裂肛は肛門にできた切り傷と考えてよいです。原因となるのは排便異常(主に便秘、下痢の場合もある)が、ほとんどです。症状は痛みが強度であることが特徴です。出血はあっても軽度なことが多いです。治療は便通を整えて、軟膏による保存的治療が主体ですが、肛門が狭く(肛門狭窄)なったりすると、手術が必要になることがあります。
◆ 痔ろう
痔ろうは肛門周囲に膿の通り道となるろう管ができて、疼痛、排膿をくり返す病気です。痔ろうの前段階病変に肛門周囲膿瘍があります。肛門周囲の腫脹、化膿のため発熱し、激しい痛みが出現します。この時には切開術が必要です。切開するだけで、治癒することもありますが、症例の5~8割は痔ろう根治手術が必要となります。
以上の痔疾患の発症には、便秘、下痢などの排便異常が大きく影響し、生活習慣を改善することで痔の発症、悪化を防ぐことができます。以上の注意点を挙げておきます。
〈排便は便秘、下痢をしないよう、短時間で。肛門を清潔にし、毎日入浴(血行をよくする)。アルコール、香辛料はほどほどに。長時間の同姿勢(長時間の運転など)は避ける〉です。
おしりに違和感がありましたら、早めに肛門科を受診することをお勧めします。